背嚢を結んでくれた兵の脱走
どんな伝承か
弘前の軍隊での話。背嚢に外套をくくりつけるのが語り手には不器用でできず、いつも代わりにやってくれる兵がいた。その男は「兵隊ってつまらねえ。除隊して帰ってくる時、汽車がヒョー、バカミタ、バカミタと言うんだそうだ」と口にしていたが、あるとき行方不明になった。さあ大変だというので探したけれども、ついに見つからないでしまった。逃げてしまったのである。妙に語り手へ「これくれっからあ、これくれっからあ」と言っていたと思ったら、見えなくなってしまった。とうとうつかまらなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。