園瀬堤に飛ぶ四斗樽の火の玉
どんな伝承か
慶応三年のある夜、下八万村の腕利きの若い大工磯吉は、建前の祝いで酔って園瀬の堤を帰っていた。うわさの一本松のあたりに四斗樽ほどもある火の玉が浮かび、見定めてやろうと堤の陰で待つと、火の玉はゆらゆら近づいてきて、轟音とともに真っすぐ飛んできた。磯吉は悲鳴を上げて堤に顔を伏せ、夢中で家へ逃げ帰った。振り返ると火の玉は金剛寺跡のあたりを漂っていたという。八万町には、城の鎮守の祠が酒樽ほどの火となって飛ぶというがぜんどうの怪火の話もある。
原典より
かねて話にきいている堤の一本松に、四斗ダルほどもあろうかと思われる火の玉がボッカリと浮びあがったからだ。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。