影に乗る大入道に追われた小者
どんな伝承か
徳島城下の福島に住む藩士の家の小者が、年の瀬も押し詰まった寒い夜、正月の味噌の支度に内町で大しゃくしを買って帰る途中、手が冷たいのでしゃくしを襟元から背中に差し込み懐手をして歩いていた。福島の楼門を抜けたとたん、雲が晴れて背後から月が差し、前に落ちた自分の影の頭に、丸い大入道の頭がのしかかっていた。小者は叫んで走ったが大頭は離れず、主人の家の門に体ごとぶつかって気を失った。家の者が駆けつけると、背中に大しゃくしを差したまま倒れていたという。
原典より
なんと影の自分の頭の上に丸い大入道の頭がのしかかっているのだ。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。