屋敷跡の高工に現れる白犬
どんな伝承か
徳島市の常三島には藩政のころ大きな武家屋敷があり、評判の美しい娘が純白の猛犬を飼っていた。ある年の盆踊りの夜、その犬に躍りかかられた若衆が石を包んだ手ぬぐいで打ちすえたところ犬は死に、二人の若衆は犬の死骸とともに屋敷内に生き埋めにされた。大正十二年、跡地で徳島高等工業学校の工事が始まると、白い犬に見つめられたと語った監督が翌日助任川に死体で見つかり、天井裏で白犬を見た工夫は足を踏み外して即死した。白犬を斬ると豪語した雇員も、犬に追われたと語った翌日に割腹した。戦後も白犬を見た老小使が数日後に急死したという。
原典より
たちまち二人の若衆が捕えられ、白犬の死がいと共に屋敷内に生埋めにされてしまった。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。