一本のヤナギに出る二人の幽霊
どんな伝承か
徳島市佐古町九丁目の紺屋の裏手、旧佐古小学校の運動場との境に一本のシダレヤナギがあった。孫娘をかわいがっていたうどん屋浦亀の婆さんが先に亡くなると、孫の顔見たさに柳の下へ幽霊となって出るという噂が立った。明治四十一年に学校が移転すると柳も正門わきに移され、噂もついてきた。やがて新校舎に入るのを願いながら病死した小川先生の幽霊も柳の下に出ると言われ、一本の柳に二人の幽霊が出る話になった。校長室の窓から大きな手が出た、青い火の玉が転がっていたとも語られ、明治四十四年ごろには生徒まで幽霊見物に出たという。
原典より
そこで婆さんは孫娘の顔が見たさに、ヤナギの下へ幽霊になって出るといううわさがたった。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。