夫が撃たれた時刻に渦巻いた髪
どんな伝承か
大正十二年四月、アナキストで有名な高山という人が、東京の赤坂の溜池のあたりで極右派の者に射殺された。ちょうどその時刻、妻の静子夫人は小石川の実家で髪の毛を洗っていた。香水の漂う黒く長い艶やかな髪を白い手で洗っていると、その髪が突然、水の中でぐるぐると旋回し、根元に巻きついて解けなくなった。母や隣家の女房、平田という親分の小母さんまで手伝っても解けず、いらいらしているところへ高山の友人が駆け込み、夫の変死を知らせた。髪が渦巻いた時刻は、夫が撃たれた時刻とまったく同じであったという。精神感応とは異なる心霊物理現象だと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年))
『心霊の神秘』は、武久勇三が昭和二十四年に著した心霊現象の解説書である。近親の死に際して現れた幽霊や夢知らせ、精神感応などの実例を、戦時中の出来事や知人の話、外国の研究記事から集めて語り、精神感応や霊波の考えで説明を加える。後半の「第三篇 超心理学」では透視術・夢の原理・催眠術・読心術を説き、巻末に「まぼろしの靴音」「死と心霊の神秘」を置く。奥付には千部限定版とあり、善隣出版社から出た。