仙人と見立てられた心霊研究者
どんな伝承か
一九七五年三月九日、筆者は日本超能力研究会の報告会のため、東京・千駄ヶ谷の野口英世記念館へ出かけた。主宰の中岡俊哉が九か国の超心理学研究を視察してきた報告会である。早く着きすぎて二階の食堂でコーヒーを飲んでいると、同じく早く来た青年が向かいに座り、いい血色だと言い、やがて、まるで仙人のようだと言い出した。頭髪や耳の穴の毛の具合が仙人の特徴なのだという。額を見て先祖の関係もきれいになっていると言われたときだけは、筆者も素直にうなずいた。名刺を持たないその青年は競輪選手で、人相を研究し、近ごろは仙道も学んでいて、師の風貌が筆者にそっくりなのだそうだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊の世界 ― 小品集(田中千代松・心霊研究文庫III・1978年(昭和53年))
『霊の世界――小品集』は、田中千代松が心霊研究について新聞・雑誌に書いた随筆や小論を集め、一九七八年に心霊研究文庫の第三冊としてまとめた本である。心霊研究協会(SPR)の成り立ちや催眠術・超心理学の来歴、クルックスやフラマリオンらの研究を論じる文章のほか、土井晩翠や福来博士の心霊体験、平田篤胤が記した仙童寅吉、秋山真之の霊夢などの話を収める。「エッセイ種々」「群像」「ものがたり回顧」の三部に分け、各篇に初出誌を記す。