連続殺人鬼事件
どんな伝承か
黒い筒袖の外套の賊が跳梁するなか、十二月二十五日の夜には香西村の大根に賊が現れた。大根は街道沿いで、一里余り西には佐原町があり、道は八日市場や多古町へ通じている。駐在所から少し離れた掛茶屋の主婦と養女が絞殺され、枕の上には「高木」と彫った新しい印形が載っていた。印形は佐原町関戸の印判屋で十一月二十一日に彫られたもので、香取町下ノ野の高木と名乗る背の低い男が注文したと分かる。警察は同名の男を検挙したが本人は一言のもとに否認した。鶏籠の一件と同様、証拠があまりに芝居がかっており、検事局も容疑者の素行から慎重であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が明治・大正の世に起きた事件や奇談を読み物に仕立てた実話集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十四年に千葉の久賀村で起きた鬼熊の事件など、一揆・殺人・盗みの事件、遺言状をめぐる話、奇人の話、幕末の暗殺を、関係者の話や記録をもとに描く。各話は章を立てた読み物で、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねて聞いた補遺を付す。