潜伏中の熊治が五木田の裏手に現れ暗がりを探ったところ
どんな伝承か
熊の捜索は続いた。二十七日の夜には三里塚開墾地の道路に現れて警官に発見され、肩にかけていた上着を投げて逃げた。三十日午前二時ごろにも三里塚付近に姿を見せ、九月一日には五千人を動員して大須賀附近を捜索したが何も得られない。三日には開墾地の一軒家に、九日の夜には山倉虎吉の家に現れて品を持ち去った。そして或る夜、熊は大門の家の裏手に現れ、庭を下りながら暗がりを探ったところで、そこに銃を持って張り込んでいた豊和村飯塚の駐在巡査河野に出会う。河野巡査はそのために撃たれて命を落とした。警察は十二日にも山狩りを催したが、それも徒労に終わった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集・大正~昭和初期(推定))
本書『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎による幕末から昭和初期にかけての日本各地の怪談・奇談を集成した作品である。明治維新期の松木事件から関東の連続殺人鬼事件まで、実地取材に基づく歴史的事件の記録と、民間に伝わる幽霊譚・怪異現象が混在している。特徴は、単なる怪談の創作ではなく、実在の地名・人物・事件を背景に、社会的矛盾や人間の怨恨が生み出す超自然現象を描く点にある。