茶店で皿を叩き落とす少女
どんな伝承か
甚六は岩坂の宿を朝早く出て帰りかけたが、坂下という小村まで来ると喉が渇き、路傍の出茶屋に入った。好物の冷麦を頼んで皿を持ち上げ、口に運ぼうとすると、激しく叩かれたように皿が膳の上に落ちた。持ち直しても、力を入れて高く持ち上げても同じで、とうとう皿は土間に落ちて真二つに割れた。手を握ったり開いたりしてみたが異常はない。すると茶屋の主が、あなたの傍にいる子どもが皿を叩き落としているのだ、右側に十二、三の女の子がいるがお伴さんではないかと言った。甚六は顔を蒼くして震えた。やがて主が「小女がいなくなった」と言い、汲んでくれた茶を飲んで、ようやく人心地がついた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。