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吉野山中の魔神

所在地奈良県吉野郡吉野町
年代江戸〜近代
登場明子、室生の光成、吉田中納言宗房、さらわれた吉田中納言の養女、姫を追った侍、明子の養父
出典日本の怪談

どんな伝承か

正平年間、吉野に南朝の朝廷があった頃、吉田中納言宗房の養女明子は、初瀬への参詣から輿で帰る途中、吉野の入口の山坂にさしかかった。急に空が暗くなり、赤い稲妻が光ると、白い靄の塊が輿の上にかかり、垂れを引きちぎって明子を宙へさらった。供の侍二人は斬りかかったが、刀は折れ、あるいは縄のようによじれて気を失った。残る室生の光成は靄が固まった怪しい姿に斬り込んだが、飛んできた小石を額に受けて倒れた。光成は姫を取り返すまで戻らぬと誓い、故郷の室生で支度を整えて吉野の山奥を探し歩いた。二十日余り後、伊勢境の大台ヶ原山で三段の滝の先に荒れ寺を見つけ、その厨で獣の肉を料理する女たちに出会った。

原典より

輿の垂れが千切れ飛んで、明子の体が輿の外へ浮いて出たが直ぐ消えてしまった。—— 日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))

『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。

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