橋の下に住みついた影の正体
どんな伝承か
丸の内から銀座へ抜ける新有楽橋で、夜道を行く者が橋の中ほどまで来ると忽然と消えるという噂が広まった。所轄の丸の内署は放っておけず、水上署と組んでランチを出し川底をさらったが、自殺者の死体も上がらず、変わったことも見つからない。そのままになっていたが、昭和九年六月に謎が解けた。麴町署の刑事が別件で捕らえた男を調べたところ、十数人の窃盗団が橋の下に住処を構えていたと分かったのである。電灯線から盗電して灯をともし、黒い布で橋桁を覆っていた。人通りの絶えた隙に欄干からぶら下がって潜り込む姿が、噂の正体だった。
原典より
* 消えて無くなる処女 (345)* 松井須磨子の写真 (346)* レンズに現われた女の姿 (347)* 幽霊写真 (348)* 死児の写真 (350)* 写真に映った登山姿 (350)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。