服毒未遂を救った霊の伝言
どんな伝承か
頭取は未亡人の敦子夫人と令妹を招き、三田氏に霊から託された用件を語らせた。三田氏の話が終わると一同は安堵した様子で黙り込み、やがて頭取が涙ながらに打ち明けた。二郎の告別式にあたる三月三十一日、敦子夫人はあとを追おうとしてカルモチンを大量に飲み、主治医の溝淵博士が薬を吐かせて命を取りとめていたのである。博士は、身体は自分のものでも子は主人の身代わりだと諭し、生涯独りで通して子を育てよと説いたという。それが霊の伝言と寸分たがわなかったので、博士自身も驚いた。翌朝、夫人は出産の期日を三田氏に尋ね、医師の見立てより遅い百か日の日を告げられたが、その日の夕刻に男児が生まれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊と神秘世界(福来友吉・1932年(昭和7年))
『心霊と神秘世界』は、文学博士福来友吉が著し、昭和七年に人文書院から発行された心霊研究と仏教思想の書である。御船千鶴子・長尾夫人・三田光一らの透視と念写をはじめ、霊の幻化、念動、物質化など国内外の心霊現象を実験記録とともに論じ、後半では自我・神秘世界・霊と生命を真言密教や華厳の教えによって説く。全五編からなり、この本文は昭和五十七年に心交社が出した復刻版で、梅原正紀・井村宏次らの「解説研究編」を付している。