亡き母を呼びかけた病床の夫
どんな伝承か
佐賀県多久市多久町の人が伝えた話である。昭和五十三年、連れ合いが危篤となり病院のベッドに寝ていたとき、夫が急に亡き母親に向かって、ここに寝なさいと繰り返し呼びかけた。夫は両親が年をとってから生まれた子で体も弱く、目に入れても痛くないほど可愛がられていた。そばにいた妻は、あのとき亡くなった母親が迎えに来ていたのだと思うと語っている。死にゆく人が亡き身内の姿を見る現象は、オシスとハラルドソンの調査でも臨終の場で非常によく見られると報告されている。
原典より
病院のベッドに寝ている夫が急に『お母さん(母親のこと)、ここに寝んしゃい。ここに寝んしゃい』と言うのです。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。