丸太につかまり岸へ戻る
どんな伝承か
川幅は八十メートルほどあり、まん中まで来ると水は肩の高さになっていた。向こう岸には色とりどりの花が咲き乱れ、その先には黒い布をかぶってうずくまる人影が四、五十もあり、こっちへ来てくれ、お前が来ればおれたちは助かるのだと口々に呼ぶ。自分が行くことで助かるならと思って川へ入っていったのだという。ところが中ほどまで来たとき、こちらの岸に当時つきあっていた男性が現れ、行くな、戻ってこいと叫んだので引き返すことにした。歩いて戻ろうとすると、ちょうど上流から自分の背丈ほどの丸太が流れてきた。太さは直径二十五センチほどで皮がついたままである。これにつかまれば楽だと思って必死でつかみ、下流の岸に流れ着いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。