岸で見捨てられ抱かれた救済者
どんな伝承か
岸に流れ着いた山本江里子は、呼び戻してくれた男性が少し離れた所にいるのを見て近づこうとしたが、足が動かない。肘と膝で這い、ようやくその人のもとへたどり着いた。体はぽかぽかと温かく、このまま死んでもいいと思うほど気分がよかったという。ところが男は倒れたままの彼女を冷たく見下ろし、歩けないのか、これから行く所があるからと言って足早に立ち去ってしまった。取り残された彼女は淋しさと恐ろしさと裏切られた思いが混じり、涙が出なくなるまで泣き続け、やがて意識が薄れていった。すると別の人が現れ、大丈夫か、こんなに冷えきって可哀そうに、ぼくがいるからもう大丈夫だと言って抱きしめてくれたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。