寝床の下の札と銭をくわえた白狐
どんな伝承か
明治三年十月十一日の朝、春が寝床を片づけると、床の下から五百文札と百文札が出てきた。前の晩の夢に長壁大神が来たときに賜ったものと思われた。その後、大神の使いが来て、明日晴れれば諸神が客に来て管弦の宴があるので昼に宮へ参って酌をせよと告げ、家の者にも聞かせたいと願うと許された。使いは十七、八ばかりの島田髷の女で、大神に大勢仕える侍女の一人だという。昼前には白狐が裏門のあたりへ、菊の葉を熨斗に挿した五百文の包みをくわえて来て春に渡して帰ったが、この狐も春にしか見えなかった。
原典より
○十一日朝春女臥床を取をさむるに其床の下より五百文札と百文札出たり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。