篤胤が天狗の僧正へ贈った著書と手紙
どんな伝承か
寅吉の師で常陸の岩間山の天狗界を治める杉山僧正は、山人の中でも並ぶ者のない物知りとして、天狗はもとより多くの山人からも敬われていたという。国学者平田篤胤は寅吉との縁から、幽冥界に住むこの山伏姿の僧正と付き合いを始めた。篤胤は自分の著書のいくつかに手紙を一通添えて寅吉に託し、あちらの世界にいる杉山僧正の手もとへ贈り届けさせて、その批評を求めたことさえあった。寅吉の聞いたところでは、この僧正は弟の熙道僧正とともに三千年以上も前に現世を去った者だという。
原典より
平田篤胤も寅吉との縁によって、幽冥界に棲息するこの凄い山伏姿の杉山僧正と交際を始め、自著『神代文学考』『霊能真柱』その他に、一通の書翰を添えて、寅吉に托して彼界の杉山山人の手許に贈呈し、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。