葛城山で出会った仙人照道大壽真
どんな伝承か
明治八年八月七日の夕暮れ、大和の葛城山頂で修行していた河野久は、水を汲みに少し下ったところで、三十三歳ほどに見える色白で眼光の鋭い、紋付に羽織袴で太刀を帯びた男に出会った。男は清水のある所へ案内し、昨夜何か変わったことはなかったかと尋ねた。鹿が五、六頭来たと答えると、男は笑って、六頭ではなく五頭、二頭は親で三頭は子鹿だったろうと言い当てた。驚いた河野が教えを乞うと、男は飛ぶような速さで夜道を進み、途中で気を失った河野に霊薬を含ませて蘇らせ、明け方に吉野の山奥の岩窟へ導いた。男は応永生まれの照道大壽真と名乗り、鎮魂の秘訣を授けたという。
原典より
その鹿は六疋ではなく五疋で、然も二疋は親鹿、三疋は子鹿であったろうと言われますより、—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。