幸安誕生の前夜に母が見た大雪の夢
どんな伝承か
参沢宗哲が、幸安が生まれた時に何か不思議なしるしはなかったかと母のさきに尋ねると、奇異というほどのことはないとの答えだった。ただ、幸安が生まれた天保六年十一月二十六日の前の晩、瓦町の城下一帯にまれな大雪が降り積もって大変美しく見え、その雪を手に取る夢を見たという。さらに、兄弟の多い中でも幸安だけは正直で、幼いころから親によく仕え、子どもの遊びを好まず手習いや読書ばかり望んだが、貧しくて習わせられず寺奉公に出したこと、今は思いがけない縁で幸安のおかげで暮らしが立っていることも語った。
原典より
奇異なる程の事は無之候、但し幸安が生れし天保六年十一月廿六日の前夜、夢に此瓦町御城下一円稀なる大雪降り積り甚だ奇麗に見え其雪を手に取り候夢を見たる計にて御座候、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。