薪を使わず湧く風呂と甘酒
どんな伝承か
小竹繁井の直話である。不思議なのは年恵の行った、お手かざしという行法であった。風呂に水を汲み込んでお手かざしをやると、少しも薪炭を用いずに風呂の水がたちまち熱くなる。繁井はよくこのお手かざしの風呂に入ったものだという。甘酒などもこのお手かざしですぐに出来た。空瓶が二本あれば美味しい甘酒がいくらでも戴け、その結構な味は今でも忘れられないという。そのくせ年恵自身は飲食物の不用な身であるから、そうしたものは一切他人に施すだけであった。神の音楽は最初は遠方に聞こえ、だんだん接近して遂に年恵の部屋の内部に聞こえる。信者たちはそんな場合には部屋の方に向かって礼拝したものだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。