前世はアイヌの酋長と安禄山
どんな伝承か
読売新聞の婦人部長から、前世を見てくれるおもしろいバアサンがいると電話で誘われ、著者は銀座裏の料亭の一室で、部長とヤジウマの友人を交えて会合した。バアサンは人と向かって話をしていると、頭の上に天然色のテレビジョンのようにその人の前世の姿が見え、一生の事象が早送りで映されていくのだという。著者の前世はアイヌの酋長のひとり息子で、二十三歳のとき流れ矢に当たって死んだ。さらにそのまた前の前世として、ゲンソウという王様の臣下のいちばんえらい人で反乱をくわだてていると語ると、中国史にくわしい友人が『そりゃ安禄山じゃないか』と口をはさんだ。バアサンは歴史を何も知らないと答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。