青山と三鷹で試した念の交信
どんな伝承か
戦争中、哲学科へ行った友だちからテレパシーをやってみないかと誘われ、実験してみることになった。著者のうちは青山、彼は三鷹に住んでいたので、それぞれの自宅でやることにし、交信は今晩の零時から三十分間、著者が発信、彼が受信と役割を決め、一分ごとの升目に頭に浮かんだ思考を書きとめた。翌日つき合わせると、隣のイヌの名前のつもりの『カチ』が向こうでは時計の音になっており、『たまにはしるこをおごりたくなれ』が『やつに今度しるこでもおごってやることにしよう』となって届いていた。『シューベルトは発疹チフスで死んだそうだ』と送った彼は、学徒出陣ののち満州で発疹チフスで死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。