嵐を駆け抜けさせた雨やみの術
どんな伝承か
著者は、どうしても雨が困るときに限り、決まった場所から雨を退けられるようになったという。忘れられないのは自分の結婚式の日で、一九六五年一月三十日の午後、ドイツ東亜研究協会で式を挙げることになっていた。ところが前日、発達した低気圧が西日本を荒らし、当日は関東が一日大荒れという予報が出た。年配の客が百人以上集まるのに申し訳ないと、幹事に頼まれ、暗くなりかけたころに念じてみた。夜の風雨は激しかったが、翌朝は雪が五センチ積もり雲一つない快晴で、低気圧は関西で速度を倍にして夜のうちに関東を駆け抜けていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。