立ち小便をした祖父の生霊
どんな伝承か
仏間を音が回る家の祖父も、何年か後に中気になって寝たきりになった。いよいよ臨終という晩、家族と親類一同が枕もとに詰めていると、隣のオバサンが玄関へやって来て、ご隠居さんはお元気になられてよかったと挨拶した。母が、今晩はもういけないのだと言うと、オバサンは、買い物から帰るとき角でご隠居に会い、立ち小便をされていたので失礼と思って回り道をして来たと言う。奥へ通されて枕もとに座ると、祖父がうすく目を開け、さきほどは大変ご無礼をした、わざわざ回り道などされなくてもよかったのに、とんだところを見られたと言った。玄関の声はこの部屋には聞こえない。祖父には同室していた完全なアリバイがあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉が昭和四十七年に著した随筆集で、一冊の予定を前後編に分けたうちの後編である。ニューギニアやニューブリテン島の未開部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続き、幽霊についての自説、自身や身内が出会った怪談、テレパシー・呪い殺し・雨やみの術の実験談を収める。「原始人」「幽霊」「テレパシー」の三部からなり、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。