次々と姿を変えるヒヒの屋敷
どんな伝承か
一九六〇年頃から伝わる話である。夜、乞食が屋敷の前を通り過ぎると、中からオーイ、オーイと呼ぶ者がいる。覗き込むと、暗い中に青い火が二つ燃えていた。よく見ると動物とは違う生き物で、形は人のようだが口は耳まで裂け、鋭い牙が生えている。ヒヒはこっちへ来いと言い、動けずにいる乞食の腕を毛むくじゃらの腕で掴み、屋敷の中へ引きずり込んだ。だがヒヒは大笑いして、俺はそんなに凄いかと尋ね、一つ目小僧に変わり、鳥の化け物、首の伸びる大入道、顔だけの化け物と次々に変化した。乞食は転げ回って笑った。翌夜、仲間を連れて来ると妖怪は喜んで変化して見せ、噂が広まって屋敷は高値で売れた。売れると妖怪は飽きていなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考-妖怪住宅の実体(高橋敏弘・西郊民俗・1991年(平成3年))
『怪異雑考-妖怪住宅の実体』は、高橋敏弘が西郊民俗談話会の発行した『西郊民俗』第百三十七号(平成三年十二月)に寄せた小論である。妖怪が住むと噂される山形市の家を著者が歩いて調べた話を中心に、幽霊屋敷と妖怪住宅の違い、妖怪に家を取られた男、妖怪が呼ぶ屋敷、家賃を払った妖怪の話を記す。四つの節と注からなり、大正末期の話は東俊助の『山形奇異実録』を典拠に挙げ、今も家に残る通い帳にも触れている。