次々と姿を変えるヒヒの屋敷
どんな伝承か
一九六〇年頃から伝わる話である。夜、乞食が屋敷の前を通り過ぎると、中からオーイ、オーイと呼ぶ者がいる。覗き込むと、暗い中に青い火が二つ燃えていた。よく見ると動物とは違う生き物で、形は人のようだが口は耳まで裂け、鋭い牙が生えている。ヒヒはこっちへ来いと言い、動けずにいる乞食の腕を毛むくじゃらの腕で掴み、屋敷の中へ引きずり込んだ。だがヒヒは大笑いして、俺はそんなに凄いかと尋ね、一つ目小僧に変わり、鳥の化け物、首の伸びる大入道、顔だけの化け物と次々に変化した。乞食は転げ回って笑った。翌夜、仲間を連れて来ると妖怪は喜んで変化して見せ、噂が広まって屋敷は高値で売れた。売れると妖怪は飽きていなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考-妖怪住宅の実体(西郊民俗・1991年12月)
本稿は1991年12月発行の『西郊民俗』に掲載された「怪異雑考-妖怪住宅の実体」で、山形県山形市を舞台とした妖怪住宅に関する4つの民俗怪異譚を記録している。幽霊と妖怪の混同事例、妖怪との契約と報い、妖怪による変身現象、そして妖怪退散の知恵など、多面的な妖怪住宅の実態を描き出す。特に興味深いのは、妖怪と人間の経済的相互作用や、家という物質的空間をめぐる妖怪の領分問題である。