病床から故郷の母のもとへ飛んだ娘
どんな伝承か
昭和初期の『人間奇話全集』に載る、長野県の堀籠るい子さんの手記である。大正五年、関節炎で両足が動かず長野赤十字病院に入院していたるい子さんは、十二月三日に退院の予定だったが、迎えの兄が忙しく延びていた。故郷を思って眠れずにいた十五日の夜更け、うとうとすると体が宙に浮き、見知らぬ道の上を漂って故郷の庭先に着いた。家の中の母に呼びかけたところで付き添いの伯母に起こされ、気づくと病室の寝台にいた。時刻は午前二時過ぎだった。十八日に帰郷すると母は、十五日の二時過ぎに縁側で束髪に大縞の羽織の娘の姿を見て、手を伸ばすと消えたと涙ながらに語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の四次元(鈴江淳也・心霊・四次元・1973年(昭和48年))
『日本の四次元』は、鈴江淳也が昭和四十八年に著した超常現象の取材記である。幽霊の出る家や競馬場、古武士の怨念、守護霊、心霊写真、新幹線の四次元地帯、心霊治療、物品引き寄せ、てのひら療法、比婆山の怪獣やツチノコ、死後も占う易者犬などを、当事者を訪ねて聞いた話として記す。「幽霊と怨念の世界」から「動植物の驚異」まで六部に分け、あとがきで大陸書房刊『日本の奇談』『現代の怪奇』に続く第三弾と述べ、問い合わせ先を挙げる。