墓の中で赤子を育てた飴買い幽霊
どんな伝承か
兵庫県有馬郡小野村に伝わる昔話として、関敬吾が『日本昔話集成』に収めた子育て幽霊の話。子のなかった夫婦が清水観音に祈って身ごもったが、母は産み月にたちまち死に、そのまま葬られた。その後、見慣れない女が夜更けに飴を買いに来ては黙って帰ることが重なり、不審に思った飴屋が後をつけると、女は新しい墓の中へ消えた。墓の下から赤子の泣き声がするので、翌朝人々と掘り返すと、亡骸は生きているような顔色で、膝の上で丸々と太った赤子が眠っていた。人々はこの子を育てて出家させ、子は後に名僧通幻となったという。
原典より
翌朝外の人と一緒にその墓をあばくと、葬ってからしばらくたってゐるのに、死人の顔色はまるで生きた人のようであつた。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。