けたけた笑う老婆のザシキワラシ
どんな伝承か
ザシキワラシを紹介するにあたり柳田國男に意図的な選択があったのは明白だと著者は言う。佐々木喜善が『奥州のザシキワラシの話』に記したのは、一尺二、三寸ほどで座敷をとたりとたりと跳び回る黒い獣じみた存在や、襖のすき間から飛び出す細く長い手であり、老婆のザシキワラシも記録されている。栗橋村字砂子畑の清水の六兵衛というかなり裕福な家では、明治三十年頃の旧暦三月十六日の夜、泊まった大洞犬松が、坊主頭の丸顔の小さな老婆が這い出して来て低い声でけたけたと笑い、また隅の小暗い方へ引き返すのを二、三度繰り返すのを見て、堪りかねたという。
原典より
ザシキワラシを紹介する柳田國男に意図的な選択があったのは明白である。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。