撫でれば軽く叩けば重くなる石
どんな伝承か
大和の大峰山のふもと、洞川に弥勒堂があり、境内に直径五寸ほどの卵形の石が置かれている。この石は、撫でさすってから持ち上げると軽く上がるが、叩いたあとで持ち上げようとすると急に重くなり、なかなか上がらないという。石に神霊が宿ってそうさせているのだと信じられているが、著者はこれを心の働きによるものだとしている。
原典より
その境内に直径五寸ばかりの卵形の石があって、これを撫でさすりたる上にて持てば軽く上がり、打ち敲きて後上げんとすれば急に重くなって容易にあがらず、—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。