露木旅館で外れた男子誕生の卦
どんな伝承か
著者は卜筮の「当たるも八卦、当たらぬも八卦」を自ら確かめたことがある。大磯で筮竹の占いが的中したのと同じ年の夏、伊豆の熱海で常宿の露木旅館に泊まった。露木家は代々女の子ばかりで、跡継ぎは養子でつないできた。ちょうどその家の婦人が近く出産する予定で、今度こそ男の子がほしいと言うので、著者が筮竹で占ってみると男子の卦が出た。確かに男だと告げると一家は大喜びしたが、四、五日後に生まれたのは女の子で、八卦は外れた。著者は、古来の言い習わしはうまく言ったものだと感心したという。
原典より
それより四五日すぎて、いよいよ出産になったところ、案外にも余の八卦がはずれて女子であった。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。