蝸牛の角に似た爪と蝸牛の祟り
どんな伝承か
先年、丹後の国中郡三重村字谷内の本城某という者は、幼少の時に蝸牛を多く捕えて食べたという。ある時、誤って左手の人さし指を傷つけ、ついにその爪が脱けてしまった。その後に生え出た爪は一種奇怪な形をしており、両側に蝸牛の角のような二つの爪が見えるようになった。人々はみなこれを見て、蝸牛の祟りであると言った。あまりに簡単すぎる判断であって、論理の力の幼稚な結果であろうと評されている。
原典より
その後生え出でたる爪は一種奇怪なる形を有し、その両側に蝸牛の角のごとき二爪を見るに至った。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。