夜を恐れた気合術師の孤独
どんな伝承か
浜口熊嶽のまわりには信者や取り巻き、身内のほか、大横綱の梅ヶ谷や双葉山、小笠原子爵、東条英機といった名の知れた後援者が大勢いた。無邪気で豪放、機転がきき、並外れた度胸の持ち主として多くの人に好かれながら、彼はいつもひとりぼっちだったという。夜になると寂しさに耐えられず、人を集めては宴会に明け暮れた。息子の稔は「あの方は夜を恐れたのですよ」と語る。著者は、人の命のはかなさと底知れぬ虚無が、熊嶽の内に口を開けていたのだとみている。
原典より
「あの方は、夜を恐れたのですよ」と稔は言う。—— 霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年))
『霊術家の饗宴』は、井村宏次が一九八三年に著した近代日本の霊術家の歴史である。明治から昭和初めにかけて、気合術・催眠術・霊子術などで民衆の病や苦しみを救おうとした霊術家たちの運動を、当時の新聞記事や刊行物、関係者の家族への取材をもとにたどる。プロローグと六章、エピローグからなり、浜口熊嶽、桑原天然、福来友吉と千里眼事件、太霊道の田中守平を章ごとに取りあげ、霊術ブームと取締法による衰退までを描く。