ノミの舟と六月一日の祓え
どんな伝承か
旧六月一日をムケの朔日、ワタヌギの朔日という。この日はシノハ(うしのすかんこ)にトウが立って実がなるので、その実を採ってきて座敷じゅうに撒き散らす。撒いた実を掃き集めて流れ川に捨てることを「ノミの舟」といった。あるいは敷布の下に敷いて寝ておき、翌朝、蚤の入った実を掃いて川に流すともいう。シノハの実が蚤を集めるかどうかは別として、屋内の厄を集めて追い祓う儀礼と捉えられる。六月一日は十二月晦日とともに祓えが集中する期日で、ノミの舟の系統の行事は東北地方を中心に伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に著した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と各地の採訪記録の事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、五章は書き下ろしで、章ごとに注を付す。