鉦と太鼓で疫神をたたき出す病送
どんな伝承か
対馬の南部では、悪い疫病がはやると病送と呼ぶ行事をした。村人が集まり、毎晩鉦や太鼓を打ち鳴らしながら村じゅうを隅々まで追い回し、最後に村はずれで疫神をたたき出すのだという。著者は、鉦や太鼓で大騒ぎしながら村を巡って境の外へ送り出すこのやり方を、物音を立て叫び声を上げて猪や鹿を追い込む狩りの勢子になぞらえ、相手が厄神ならば暮らしの場の外へ追い出せば目的は果たされると述べている。
原典より
村民が集まって毎夜鉦や太鼓を叩き村中を隈なく追いまわり、村外れで疫神をたたきだす式という。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。