烏の言葉を聴かせる狐の草紙
どんな伝承か
貧しい爺が年取り仕度に町へ行く道で、死馬にたかる犬を恐れて近寄れない痩せた跛狐を見かね、犬を追って肉を分けてやった。帰り道、その狐に導かれて山陰の座敷へ通されると、老いた狐の夫婦が礼を述べ、耳に当てれば鳥獣虫の声が人の言葉に聞こえるという聴耳草紙を与えた。正月二日の朝、爺が草紙で烏の話を聴くと、城下の長者の娘が難産で、古暦と縫針を煎じて飲ませればよいと言っていた。爺は城下へ行き、そのとおりにして娘に安産させ、多くの礼をもらって栄えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。