大木の下で聞いた神々の産の問答
どんな伝承か
貧しい森平は、身重の妻を置いて薪取りに山へ入り、日が暮れて洞の大木の根もとで夜を明かした。夜半、奥の方から馬の鈴や掛け声がにぎやかに近づき、大木の前で止まって山ノ神を誘った。木の中から声が応じ、来たのが塞ノ神と箒神だと知ると、今夜は客があって出られないので二神に任せると答えた。明け方に戻った神々は、森平と隣家で同じ夜に子が生まれ、森平の子は男でわずかな運しか持たず、隣の子は女で九十九の宝が付いていると告げ、塞ノ神の取り持ちで二人を夫婦にしたいと言うと、山ノ神も同意した。山を下りると両家に本当に男女が生まれており、吉相だとして二人の縁組はすぐにまとまったという。
原典より
其一部始終を聴いて居た森平は不思議なことも有ればあるものだと思って、翌朝早く山を下りて還って見ると、家には昨夜お産があつて男の子だと言ふ。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。