婚礼の夜に担ぎ込まれた棺
どんな伝承か
ある所の美しい娘が年頃になって婿を取ると、村の若者たちはひどく腹を立て、相談して婚礼の夜に葬式の支度を整え、棺を担いでその家へ乗り込んだ。式が済んで若者たちの祝いの席になると、彼らは棺を床の間に据え、線香と灯明を供えて鉦を叩き、念仏を唱え始めた。嘆いた主人は座敷の真ん中に出て婿に断りを入れると、娘を引き寄せて首を斬り落とし、亡骸を棺に納めて、中身が入ったのだから持ち帰れと村人に迫った。婿は新妻を死なせた村人を討とうと刀を抜いたが、舅と姑に止められた。若者たちは娘の亡骸を押し付けられ、棺を担いで帰るほかなかった。主人はその後、婿に他家から嫁を迎えて跡継ぎにしたという。
原典より
そして其等の若者共は皆寄り集つて相談をして、婚礼の夜に葬礼の仕度をして、棺箱を担いで其家に行った。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。