味噌桶に逆さに埋められた継娘
どんな伝承か
ある旅人が、夕方なのにどの家も戸を閉ざしている村に来て、村はずれの家に泊まった。夜半、外で何者かが戸を叩き爪で掻いて開けてくれと嘆くので節穴から覗くと、二本の大角を持つ小柄な化物がいた。わけを問うと、この家の継娘で、継母に味噌桶へ逆さまに生き埋めにされ、亡骸が逆さのままなので両脚を上にした姿でしか歩けず成仏できない、戸の御守札のせいで入れないと泣いた。旅人が哀れに思って少し戸を開けると、化物は飛び込んで継母の喉笛に噛みつき殺した。娘は三年来の妄念が晴れたと言い、旅人は裏の味噌桶から逆さの屍を取り出して村人と共に墓に厚く葬った。それ以来、両脚を頭の上に戴いた化物は村に出なくなったという。
原典より
旅人は化物に案内されて裏の方に行って見ると、いかにも味噌桶に倒さまに埋められた娘の屍があつたから、それを取り上げて村人と語らつて墓場に厚く葬ってやつた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。