なら梨の沼の大蛇を討った末息子
どんな伝承か
臨月の母がなら梨を食べたいと言うので、父が深い山へ採りに出た。岩の上の婆は、帰った者はないと止めつつ、三本の青笹と枝の瓢箪が鳴らす行けと戻れの合図に従えと教えた。父は戻れの合図を聞かずに進み、沼辺の梨を取ろうとして姿が水に映り、沼の主に呑まれた。兄も同じ目に遭った。末の弟は婆から切刃をもらい、行けの合図を確かめて進み、流れに浮き沈みして踊る朱の膳と椀を拾った。沼から現れた大蛇の大口に刃を突き通して倒し、腹から兄と半ば腐った父を出して椀の水で洗い、呼びかけて蘇らせた。梨を食べた母は無事に産をし、朱膳朱椀はその家の氏神だったという。
原典より
息子は此物こそ父や兄の仇だと、乗り上つて来たのを待ちすかして居て、あんぐりと開けて来る大口に突然切刃を突き通した。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。