方々を歩き回る遊び地蔵
どんな伝承か
上閉伊郡松崎村字新張という所に、遊び地蔵というものがある。語り手の村から遠野の町へ行く往還の傍らに一本松があり、その樹下に台石ばかりあって、いつも地蔵は居ない。この地蔵は常に方々を遊び歩き、昨日は町にいたかと思うと次には在郷に行っていたり、時には酒屋の前や遊女屋の前に行っていることさえある。そして二、三年目ほどでようやく自分の屋敷に還るが、帰ったかと思うとまたすぐどこかへぶらりと出掛けるので、遊び地蔵の名があるという。実は村内の若者たちの力試しの相手となって方々を歩くのだとも伝える。
原典より
陸中国上閉伊郡松崎村字新張といふ所に、遊び地蔵と云ふのがある。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。