日帰りで京を往復した小僧と天狗
どんな伝承か
昔、大蛇に文珠寺という寺があった。ある年の六月七日の朝九時ごろ、住職は小僧に徳利を持たせて本町へ酒を買いに出したが、いくら待っても戻らない。和尚が探し回ると、寺の前の並木で松の枝に徳利が掛かっていたが、小僧の姿はなかった。日が暮れてから帰った小僧は、京の祇園を見てきたと言い、十四、五日もかかる京へ日帰りできるものかと叱られた。ところが十日ほどして、両国から戻った者が寺に寄り、七日にお宅の小僧さんが京の祇園祭を桟敷で見ていたと話した。小僧の語る祭りの様子も少しも違わず、並木で大きな山伏に誘われて見物に行ったという。和尚は天狗の仕業に違いないと人々に語ったと『古今佐倉真佐子』にある。
原典より
漸く日が暮れて小僧が帰って来たので、問いただしてみると小僧は「京の祇園を見て、只今もどりました」という。—— 佐倉市史 民俗編――伝説・怪異(佐倉市(編)・佐倉市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐倉市史 民俗編――伝説・怪異(佐倉市(編)・佐倉市史)
『佐倉市史 民俗編――伝説・怪異』は、千葉県佐倉市の市史の民俗編のうち、第七章「民俗知識」と第八章「口承文芸」の伝説の節である。市内で採録した吉凶の予兆やまじない、民間薬、天気の言い伝えと、狐や狸の化かし、デーダラボーの足跡、岩富の首なし塚、天狗、狐火、印旛沼のカワボタルなどの伝説を収める。伝説は文化財保護委員会の分類に倣って自然伝説・歴史的伝説・信仰伝説に分け、終わりに村々の禁忌を置く。