長者の娘の眼を治したほうずの池
どんな伝承か
昔、福沢に天田長者という豪族が住み、大勢の作男や下女を使っていた。長者にはかわいらしい娘が一人いたが、ふとしたことから眼を患い、どんな薬や治療を求めても良くならなかった。ある夜、夢枕に神が現れ、小野沢の薬師さまに参って、そのそばにある温かい池の水で眼を洗うよう告げた。眼の見えない娘は風呂焚きの喜助を供に毎日参り、二十一日の願をかけて池の水で眼を洗い続けた。満願の日、眼はすっかり治り、この池は頼水の池(ほうずの池)と名付けられた。長者の家は、のちに木曽義仲の焼き討ちで滅んだと伝わる。
原典より
こんなとき、或る夜の夢枕に、「小野沢の薬師さまにお参りしてその傍にある、温い池の水で眼を洗いなさい」と、神のお告げがあった。—— 坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌)
『坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説』は、長野県坂城町の町誌上巻(自然編・民俗編)から、民俗編の数章を抜き出したものである。祟る所や神罰、ヒトダマ・狐火などの怪異、魔除け、植物の禁忌といった俗信を地区ごとの事例として番号を付けて並べ、続いて甘利さま、天田長者とほうず池、苅屋原の七不思議、貉和尚、夜泣き石など三十余りの伝説を収める。伝説の章は調査員の調査をもとに、以前の調査記録も二、三篇併せて載せる。