油売りが残りの油を注いで富んだ地蔵
どんな伝承か
山城の紀伊郡の油懸山西岸寺の地蔵は、願いのある人が灯油を像に注げば願いがかなうという。昔、山崎の油売りが寺の門前で転び、油をほとんどこぼしてしまった。呆然としたが、これも運命、このままでは先々にも災いがあろうと思い直し、残った油を門内の地蔵に注いで、未練なく帰った。その後、商いは日に日に栄えて大いに富んだ。それから願いのある人は油を注いでお礼にするようになったという。
原典より
号油懸事、従古祈願ある者は灯油を此像に灌ぐ時は即所願を成就するなり、其濫觴を尋ぬるに、云、昔山崎に油を商ふ者あり、或時油を荷ひて当門前を過るに、忽地に倒れて油を灑して残幾なし、恾然として立つ、思惟すらく、是命なる耳…—— 迷信の研究(富士川游(監修)・富士川游・医学史/迷信研究・1932年(昭和7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の研究(富士川游(監修)・富士川游・医学史/迷信研究・1932年(昭和7年))
『迷信の研究』は、富士川游が東京の中山文化研究所で監修し、昭和七年二月の緒言を付して世に出した迷信の解説書である。迷信を思考の錯誤ととらえ、その発生の由来を説いたうえで、身体・精神・疾病・妊娠と出産・育児・禁厭・相法・卜占・天文と暦・犯罪・宗教の欄ごとに迷信の事例を挙げ、科学的な説明を加える。同研究所の展覧会に使った説明のポスターをもとに簡潔にまとめ、巻末の奥書に参照した独逸と日本の文献を掲げる。