斬られて首を飛ばした大石
どんな伝承か
昔、ある年の初夏の夕暮れどきであった。旧楢葉郡赤木村の横田某という侍が、下千里平道地の河原の大石に腰を下ろし、草鞋の紐を締め直そうとしていた。すると突然、その大石がむっくりと立ち上がった。侍はひっくり返りそうになったが、さすがに身は軽く、飛鳥のように前へ跳んで身構えた。見れば大入道で、今にも掴みかかろうとしている。侍は咄嗟に腰の太刀を抜き放ちざま切りつけた。ぎゃあという叫び声とともに大きな音を立てて倒れ、手ごたえは充分にあったが、長居は無用と家へ戻った。翌朝行ってみると、人間の胴体とそっくりな石が首を刎ねられて横たわり、刎ねられた首石は赤木村の横田某の裏山に飛んで落ちていたという。
原典より
昔、ある年の初夏の夕暮れどきであった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。