不破の関と京で重なった夫婦の夢
どんな伝承か
『今昔物語』に見える話として引かれる。文徳天皇の代、惟孝親王に仕える常澄安永は、宮家の領地から納め物を集めるため上野国へ下り、年を経て都へ戻る途中、美濃国不破の関に宿をとった。京に残した若い妻が気がかりだった安永はその夜、少年が灯をともして妻を連れて来て、壁一つ隔てた隣室で二人で飯を炊いて食べ、共に寝る夢を見た。怒って踏み込むと灯も人も消え、目が覚めた。急いで京へ帰ると妻は無事に迎え、昨夜、見知らぬ少年に連れられて空き家で飯を炊いて食べ、床に入ったところへ安永が現れて目が覚めた夢を見たと話した。二人は同じ夢を見ていたのだった。
原典より
そのとき安永も、昨夜その見た夢のことを語り聞かせて共々に不思議がつた。—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、神道の神霊の垂示を引きつつ、心霊の本質と「化精」、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じる。序説と七章からなり、第三・四・五・七章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べ、今昔物語の説話、江戸から昭和の国内の見聞、欧米の報告を挙げる。