山芋掘りで狐に憑かれた亀次郎
どんな伝承か
九鬼村で亀次郎という男に狐が憑いた。誰がどれほど足音を忍ばせて近寄っても、亀次郎はすぐに気づいて頭を抱えて苦しがるので、家族は狐よけのまじないを施した。すると誰が来ても気づかなくなり、人がいないと思うと起き上がって胡坐をかき、手を打つ真似をして小声で浮かれ出す。背後に忍び寄った鉄五郎が怒鳴りつけると、慌てて布団に伏せ、重病人のふりをした。ある日は大きな鰯を七、八十匹平らげ、魚のはらわたを手づかみで食べ、他家の内幕までしゃべり散らした。なぜ憑いたかと問われた狐は、山で昼寝をしていたら山芋掘りに来た亀次郎に驚かされたからだと答えたが、毎日熱い酢で責められて、ついに離れていった。
原典より
彼は或日一度に、七八寸ある大鰯を七八十疋ばかりべロリと平げ、後には魚の腸ばかりを手掴みで大食して人々を驚かした。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。