狸屋敷で転がる炭団の火の玉
どんな伝承か
大正八年頃、京都五条辺りの古本屋の女主人が語った話。以前この店より少し上手にあった大きな古い家は、貸家であったが、誰一人として長続きせず、三日四日で慌てて出て行く者もあり、近所では狸屋敷・化物屋敷と呼ばれていた。女主人の父・八太郎が借りて住んだが、何事もなかった。前に借りていた人に会って訊くと、ある夜、寝床から起きて煙管で火盆を引き寄せようとしたところ、次の間から炭団が火の玉になって独りで転がってきたので、翌日ほかへ逃げ出した、という話を聞いただけであったという。
原典より
次の室から、炭團が火の玉になつて獨りで轉げて来たので、翌日他へ迯出したとのことを聞いただけでした。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。