雀の巣へ小蛇を吐き出した母蛇
どんな伝承か
安永年間、讃岐の高松の林という区域に二棟の土蔵があり、一方の土蔵の窓の廂に雀が巣をかけていた。五尺余りの蛇が土蔵の屋上から雀の巣めがけて飛びついたが届かず落ち、樹を伝って登り直しては飛びつくことを昼夜十日ほど繰り返した。見物人が集まり騒動になる中、蛇は最終日、飛びつく勢いで口から小蛇を吐き出し、母蛇はそのまま空から落ちて死んだ。小蛇は巣の中でたちまち二三尺の大蛇となって雀の子を呑み、人々が竹で叩き落として殺した。林守の畑老人が若い頃の実見談として語ったという。
原典より
蛇は最終の日には、飛つかずに終日雀の巢を眺めて居たが、其内に又飛かつる勢ひに、口から小蛇を吐出した、小蛇は目的の廂に飛附いたが、母蛇は其儘に空から堕ちて死んだ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。