窯で住処を壊され陶工を欺いた老狐
どんな伝承か
『夜窓鬼談』に載る話。京都の清水で焼き物を営む紀伊氏のもとへ、対馬の宗氏の大坂屋敷から来たという者が現れ、翌春に来る朝鮮の使節をもてなすための皿や碗など五百枚を急いで焼いてほしいと頼み、代金八百四十金のうち四十金を手付けに置いていった。紀伊氏は職人を集めて昼も夜も仕事を進め、仕上がった品を大坂の宗氏へ届けて残りの代金を求めたが、そんな注文をした者はいないと言われた。思い返せば、窯を築くときに清水坂の穴を崩しており、そこは年経た狐のすみかだった。狐の仕返しと悟って悔やんだが、以後紀伊氏の家は傾く一方だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。